開発インタビュー01 アートディレクター井上淳哉 | 三極ジャスティス

SPECIAL 特別企画

開発者インタビュー01 アートディレクター井上淳哉

― まず、本作に参加された経緯を教えてください。

IKD大佐(ケイブ副社長・池田恒基氏)から、「戦線に参加せよ」と召集令状が来たのがきっかけです(笑)。それで覚悟を決めてケイブに足を運んだところ、「企画中の作品でビジュアル面の新たな挑戦をしたいので、ディレクションをやってほしい」と…。僕は以前、ケイブの作品で『デススマイルズ』などでディレクションを担当してまして、その時はほぼ全ての仕様に関わり、スタッフのスケジュールまで監督する立場でしたが、今回は、少し距離を取って世界観の構築に注力する程度になりました。具体的には、キャラクターとメカのデザイン、美術ボードとメインビジュアル。あとはちょいちょいゲームの中身にも口を出すくらいです(笑)。それほど開発規模が大きくなったと思ってください。

― 話があった段階で、世界観の大枠も出来ていたのですか?

日本が内戦状態に陥って、少年少女が戦うというコンセプトは出来上がっていました。僕はそこにも新しさを感じたんです。実は最近、個人的に政治や軍事、歴史の分野に関心を持っていて、陰謀論も含めていろいろと調べているんです。戦争の歴史を紐解くと、開戦に至る過程には三つ巴の構図が生まれていることが多いんですよね。三つの勢力がそれぞれの利を求め工作した結果、戦争が起きる。水面下では様々な攻防が繰り広げられているんですけど、その辺の事情は歴史の教科書にはあまり出てきません。この作品では、戦争という題材を本来は表に出てこない部分にまで踏み込んで描いていると感じました。

― 企画からいろんなチャレンジ精神を感じ取ったことが、参加の動機につながったんですね。

そうです。あとは、巨大ロボットを描けることにも魅力を感じました。ケイブに在籍していた頃、メカはたくさん描きましたけど、その一方で人型ロボット禁止令が出されていたんです。STGに人型ロボットが出ると世界観が軽くなる」という風潮があったからです。以前在籍していた東亜プランで『BATSUGUN』を作っていた頃なんて、「STGにキャラクターは不要」とまで言われましたから(笑)。

― そんな過去の経緯があった中で、今回は最初からロボットを思う存分描くことができると。

ええ、それが本当に嬉しくて。もう、かなり前のめりになって描きましたよ。僕はガンプラ(※『機動戦士ガンダム』のプラモデル)を作る事で絵を覚えたほどのガンプラ少年なんです。その当時、プラモデルを作ったメカは、そらで描けたくらいです。ロボットを描くのが幼少期の生き甲斐でしたから、大人になっても描きたいに決まってるじゃないですか(笑)。なので、この作品では三十数年越しの想いが実現したことになります。漫画も含めてここまで本格的に巨大ロボットを描くのは初めてなので、大きなモチベーションになりました。

― しかも、イデオロギーの対立や少子化問題が背景にあるなど、現実の日本と地続き感のある世界になってますよね。そういった意味では、ユーザーも作品の世界観を理解しやすいのではないかと思います。

そうですね。僕は学生時代に『機動警察パトレイバー』や『AKIRA』が大好きだったので、近未来SFというジャンルには目がないんです。『三極ジャスティス』の場合、巨大ロボットが辺りをうろついているのに、その隣では学生がコンビニで買い物をしているような世界ですよね(笑)。世界観の一部だけを切り取って見ても、近未来SFとして非常に面白いと思います。でも説得力のある近未来SFを描くのって知識量が必要で、すごく難しいんです。僕も昔、漫画で試みた事がありますが、自分は何も知らないんだと痛感して苦しみました。本作ではシナリオの芝村(裕吏)さんの豊富な知識が、その辺をかなり深くまでカバーしてくれているのが強みですよね。

― 具体的な作業内容についてもお聞きしたいのですが、最初は何から手がけられたのですか?

メインキャラクターのビジュアルをイメージして、具体的なデザインにしていきました。まず手をつけたのは、いまの日本を変えようとする勢力からです(笑)。

― カスミガセキですね。

ええ。それに対抗する組織は、日本を変えずにいまの平和を守る集団である現政府への反抗的な勢力として『学生』をキーにしました。そのような国の中での対立の裏には、必ず外国勢力が存在するものなので、外国勢力はゴスロリ系でいこうと。

― なぜゴスロリ系なんですか?

欧米の貴族や富裕層たちが世界の権力を握っていると考えたときに、貴族のイメージが出てきたんです。それで、外国勢力は華やかなゴスロリファッションにすることを提案しました。

― カスミガセキは軍服系、ヤオヨロズは学生服系、ダクシスはサービス業の制服系と、それぞれ服装の色分けがされています。井上さんにも、そういったオーダーがあったのですか?

最初はカラーを3陣営それぞれ分けたい、というくらいしかありませんでした。ただゴスロリ系のファッションにもトレンドがあって、いまは軍服ドレスがすごく注目されているんですよ。ストレートなゴスロリファッションも好きですが、今回は題材的にもこのムーブメントにチャレンジしたくなってしまいました(笑)。やっぱり、時代を反映した新しい題材は取り入れていきたいですからね。ダクシスのコンセプトはこういった経緯で固まりました。

― キャラクターのデザインに関して、芝村さんと細かなやり取りをする機会はあったのですか?

芝村さんからあまり細かな注文はありませんでした。企画の段階でメインキャラクターの人数が大体決まっていたので、まず僕のほうで作品の世界観を落とし込んだデザインを人数分だけ用意しています。それに対して、芝村さんが細かな設定を作ってくださるパターンが多かったかと。

― 最初にデザインしたキャラクターは、やはりメインビジュアルにも出てくる(京極)晴也ですか?

そうです。軍服とマント、黒地に日の丸のモチーフは、いきなりシルエットとしてまとまった状態で頭の中に出てきました。『デススマイルズ』のキャスパーというキャラクターもそうだったのですが、最初のインスピレーションでその世界を象徴するようなデザインがブワーっと浮かび上がることがあるんです。
晴也のデザインが生まれた瞬間は、まさにそんな感覚がありました。現実の服装センスからするとやや滑稽に見えますけど、この作品の世界観において黒地に赤は絶対に格好いいと思います。このダークな日の丸のイメージが見えたあとは、もう筆が止まらないといった状態で描き上げました。そうやって象徴的なキャラクターのデザインが決まったら、そこからバリエーションのバランスを取りながら二人目三人目を考えていく。僕のキャラクターデザインのやり方はずっとそうです。

― 他の勢力についても、デザインの進め方は同じですか?

はい。ヤオヨロズの神室友美は、学生運動の象徴のような存在で、『青春』『若人』『自由』を3大テーゼとしています。一方のダクシスについては紆余曲折があって、最初にデザインしたのはリーダーの破壊の人形ではないんです。先ほど話した軍服ドレスをやりたかったこともあり、ナース風の軍服を着て、注射器型の機関銃を持っているローズメードを最初に描きました。ロケットという体温計型の武器を持つキャラクターもデザインしたのですが、彼女たちはメイド風として生まれたので、何かに仕える存在でなくてはいけません。リーダーは支配する立場でしょうから、この2人を両側に従える存在として、3人のシルエットを意識し、中央に堂々と立つイメージで破滅の人形が生まれました。

― 井上さんの漫画『BTOOOM!』は、極限状態に置かれた人間たちによる群像劇が魅力となっています。本作でもたくさんの少年少女をデザインされていますが、群像劇においてキャラクターを描き分けるコツはありますか?

僕の場合、ある集団をデザインするときは、必ず人物ごとのポジションを考えています。ボケたことを言うのはこの子で、ツッコミを入れるのはこの子、といった具合に全体の和を考えてデザインしていくんです。本作に関しても、その人物の考え方や感情が伝わってくるようなキャラクターを目指しました。実のところ、昔はそこまで考えていなかったんですけどね。そのせいで『エスプレイド』のときは、IKD大佐から「主人公たちが会話している姿が想像つかない」と言われました(笑)。当時は単体のデザインだけを追求していて、全体の和を考えていなかったんです。

― そういう意識が根付いたのは、やはり漫画の仕事を始めてからですか?

そうですね。ただ、漫画でも最初はそれができていなかったので、キャラクターを動かすのに苦労しました。苦労したおかげでストーリーの中で動かすことを念頭に置いたデザインを心がけるようになり、次第にちゃんと実践できるようになっていったんです。今回はキャラクターに肉付けするのは芝村さんの役目なので、芝村さんが動かしやすいキャラクターになるように意識しました。

― この作品ならではの世界観を打ち出すために、ビジュアルの見せ方でこだわったことはありますか?

美術ボードは荒廃した東京をイメージしながら描いたのですが、この作品では世界観を強調する手段のひとつとして、イラストのすべてに鉄サビのテクスチャを被せています。イラストに汚しの効果を加えることで、平和が壊されて、荒んだ世界の雰囲気を少しでも出せたらと思いまして。

― ほかにも各勢力の基地を美術ボードで描かれていますが、それぞれ基地のディテールはどのように決めていったのですか?

その辺はスタッフと打ち合わせをする中で決めていきました。カスミガセキは和のイメージだから日本の武家屋敷風、ヤオヨロズは学生運動っぽく学校にバリケードを張って立てこもっているイメージで、ちょっと賑やかな感じでいきましょう、といった具合です。ダクシスは貴族的なイメージなので、迎賓館を占拠して基地にしているような見た目にしました。

― ロボットに関しても、それぞれの勢力で設計思想が異なっていますね。

そうですね。カスミガセキはスピード型の飛行タイプで、見た目は悪役っぽい怪鳥のような風貌にしました。一方のヤオヨロズは、陸戦兵器の戦車を人型にしたイメージです。巨大な歩兵がリュックを背負って、長い銃を手にザッザッと進む感じ。ヘルメット風の頭にしているのは、そのためです。一見すると野暮ったいんだけど、動くと格好いいロボットを目指しています。ダクシスのロボットは、貴族のイメージということで剣と盾は必須だろうと。ヒラヒラしたマントも欲しかったのですが、ゲームだとそこまで表現できないのと、メカとしてマントはどうかと思ったこともあり、4枚のスタビライザーでそれらしい意匠を表現することにしました。全体のシルエットはパワードスーツに近くて、中に人が入っていそうな感じですね。

― ロボットのデザインはすんなり決まったんですか?

いえ、けっこう悩みました。ロボットのデザインって、パーツや関節の一個一個に美が求められるんです。巨大ロボットというと日本の専売特許のように思われがちですが、最近は海外のクリエイターもすごいデザインのロボットを描いているんですよ。そういったデザインを見ると、本当に惚れ惚れします。ここまで作り込むか、というデザインが山ほどあるんです。しかもデザインを見るだけで、ここはこう動くんだろうな、と想像できたりもする。そういう見る人の想像力を刺激するのがロボットの魅力だと思っているので、今回は個々のパーツがどうやって動くのかをしっかり考えて描きました。とはいえ、やりすぎるとゲーム上のモデルとして表現できないので、そこはバランスを考えながらですが。あとは、ゲーム画面を考えて、上から見ても形が大きく変わらないデザインにしています。例えば『ガンダムシリーズ』のロボットはどれもかっこいいですが、腕が大きく動くと肩が動いて全体のシルエットが変わってしまいます。これではSTGでは見づらいのではと思って、『三極ジャスティス』では上半身を戦闘機のような形状のまま固定して、その下で自由にアクションできる構造に統一しました。これでこの世界のロボットに統一性が生まれて、かつゲーム上視認しやすいデザインを狙っています。

― 最後に、リリースを楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。

僕の中でこの作品は、進化したケイブ作品という位置づけです。シューティングにとらわれず、アクションや戦略シミュレーションの要素に加えて、質の高いストーリーも楽しめる。そんなチャレンジに溢れた作品にIKD総理からアート大臣として選んでいただけたのは、クリエイター冥利に尽きますね。なんだかいつの間にか、IKD大佐が総理大臣になっちゃってますが(笑)。ケイブの新しい可能性がこのゲームにはあると思うので、ぜひ期待していてください。

※ゲーム画面は開発中のものです。