開発インタビュー02 世界観監修・シナリオ 芝村裕吏 | 三極ジャスティス

SPECIAL 特別企画

開発者インタビュー02 世界観監修・シナリオ 芝村裕吏

- ティザーサイトの公開時に「いよいよ戦争を始めますか?」という芝村さんの刺激的なメッセージが印象的でしたが…

この作品は戦争、正義をテーマにしていますが、戦争というのは戦力の不均衡によって生じた状態の是正措置でしかないんです。言ってしまえば、勝てそうだから喧嘩しよう、あるいは相手に潰される前にどうにかしよう、というのが基本的な戦争のデザインであり共通項。戦力差こそが戦争の発端なんです。逆に戦力が拮抗していれば、勝つまで待とうではないですが、戦力を育てる方向に意識が向かいます。ところが、こと日本においては、そういう概念がものすごく希薄なんですよ。アニメでも何でもそうですけど、フィクションの戦争はすべからく大義があって始まるんです。たしかに相応の開戦理由がないと国民から不満が出るので、表向きには立派な錦の御旗が必要でしょう。だけど、それはあくまで後付けの理由であることが多いです。この作品ではその部分や、各陣営から見た正義をしっかり描きたいと思ったんです。

- リアリティラインを引き上げる意味でも大事な部分ですよね。

ええ。とくに本作の場合、多かれ少なかれプレイヤー対プレイヤーの部分があるので、相手の実情がわからないと面白くないんですよ。いきなり襲ってきましたとか対立していますとかではなく、各勢力の行動原理がちゃんと描かれているほうが断然面白い。加えて、ゲームで勝敗を重ねることでストーリーに変化を出せたら、もっと楽しいでしょうね。やったらやったで自分の首を絞めそうな要素ですけど、出来ればそこまでやりたいんです。

― ゲームならではのインタラクティブな楽しみも期待できると?

現時点では、あくまで私の願望ですけどね(笑)。単に勝ったほうを表示して終わるのではなく、ゲームの世界観に則したイベントも絡めていけたらと思っています。そのほうがみんなでこの世界を作っている感じがしますから。そのほかにも、特定のキャラクターに人気が出たときに、そのキャラクターを力強く押していくようなキャンペーンとか。設定自体はしっかり作ってあるので、プレイヤーからの反響に寄り添う形でリアルタイムにやれたらいいですね。

- そういったことを踏まえて、シナリオ作りで特別に意識したことはありますか?

立場の異なる3つの正義が重なり合って、ひとつの大きな絵が見えるような作りを意識しました。個々のキャラクターに関しても、陣営の中と外でその人物の見え方が違ってきたり。そうすることで、プレイヤーによってキャラクターの評価に違いが出ると楽しいじゃないですか。贔屓の野球チームがあるように、やっぱりダクシスの破滅の人形様が一番! という人もいれば、ヤオヨロズのユルい感じが大好きです、という人がいてもいい。違いをしっかり出して、3つの陣営に分かれていることを最大限に生かしたいと思っています。

- キャラクターの詳細な設定は、アートディレクターの井上(淳哉)さんのデザインをもとに作り込んでいったのですか?

基本的には井上さんが絵を作って、文字設定はこちらにお任せいただく流れでした。井上さんはすごくフレンドリーな人で、「言ってくだされば直します」と仰ってくれるんですけど、最初に上がってくるラフの段階からクオリティがえらく高いんですよ。なので、私のほうから絵に対して何か指定を出すことはなかったです。それに、最初に絵で面白いものが上がってくると、それをどうにかして生かしたくなるんですよね。カスミガセキのリーダーである(京極)晴也のデザインを最初に見たときなんて、これは! と衝撃を受けました。黒字に赤い日の丸の扇子を持っているのですが、そのインパクトたるや絶大で。

- ラフの段階から、あのインパクトあるデザインは固まっていたんですね。

この表現は大丈夫なのか? と思ったんですけど、翌日になっても翌々日になってもあの扇子が忘れられなくて。これ程まで強い印象を残すということは、デザインとして正解であり勝ちなんですよね。だったら設定的にあの扇子を持っていてもおかしくないキャラクターを作ろうと、こっちも開き直ることにしました(笑)。

- 晴也のほかに、強く印象に残ったデザインはありますか?

破滅の人形のデザインは興味深かったですね。少女趣味の服を着て、手足には鎧を付けているんですけど、胸は守られていないんです。下にキュイラスを装着しているのだろうか?などと想像できる面白さがありました。

- メインキャラクター以外の設定も作られているんですか?

はい。チョイ役のキャラクターも含めて、全員分の設定を作っています。ちゃんと戦争を描こうと思ったら10人や50人じゃとても足りないので、これから先も頑張ってたくさんのキャラクターを作っていく予定です。目指せ何百人!の世界ですね(笑)。

― キャラクター同士のやりとりでこだわったことはありますか?

等身大の若者らしさを出すことでしょうか。高校生と会話をしていていつも感じるのですが、彼らって話が飛びまくるんですよ(笑)。話としてはちゃんと繋がるようにしつつ、この子たちって自分の言いたいことを自分勝手に話してるな、という感じが伝わるやりとりを意識しました。いま風であろうとなかろうと子供は子供なので、その子供らしさをちゃんと描ければいいな、と。女の子3人が話しているときの、ちっとも話が前に進まない圧倒的な緊張感のなさとか(笑)。大人にとって都合のいい子ばかりが登場するのは、読んでいてあまり面白くないですからね。

- かつて芝村さんが作られた『ガンパレ(高機動幻想ガンパレード・マーチ)』も、幻獣との戦いに駆り出された少年少女の日常を楽しめるのが魅力のひとつでしたよね。キャラクターへの愛着を喚起させるような要素に、こだわりがあったりするのですか?

こだわりというよりは、キャラクターへの愛着を持たせることで話をうまく転がす意味合いのほうが強いですね。パラメーターとしてのキャラクター評価だけでなく、それを裏打ちするような設定があると、ストーリーに奥行きが出ますので。長く続いてほしいゲームですし、何となくこんな感じとか一発ネタで済ませるのではなく、もうちょっと味のある人物像を心がけました。ケイブさんからの要望にも、噛むと味のあるキャラクターにしたい、というのがありましたので。

― キャラクターだけでなく、兵器の設定などもやられているんですか?

ケイブさんから「こんなものを作ってください」とオーダーがあり、私のほうで設定を作っています。今回は戦車のような現用兵器とは違う、もっとケレン味のある兵器を出してみました。というのも、カスミガセキが官製クーデターを行うにあたり、防衛省の支配下にはない兵器を登場させる必要があったんです。自衛隊にクーデターを持ちかけて拒否されたら、逆に鎮圧される恐れがありますからね。しかも、人工人間に合わせたデザインの新型兵器だと、さらに面白いだろうなと。

― それが「要塞機」と呼ばれる巨大ロボットになるわけですね。

はい。現代の戦争で活躍しているUAV(無人航空機)は、立ち後れているロシアを除いて、いまではどこの軍隊でも導入されています。つまり、現用兵器においても広い意味でのロボット技術はかなり用いられていて、もはや大きなロボットをどう使うかに話題が移ってきているんです。あとはそれを無人にするかしないかの話で、本作では量産可能な人工人間を搭乗員とした有人機が普及しています。現実だと人の価値が高いので無人偵察機の出番となりますが、要塞機は人の価値が暴落した世界ならではの設定です。無人で運用するためのシステムを開発するより、有人機のほうが安く上がるという逆転の発想が起きているんです。

- ところで、ケイブとタッグを組むのは、『ガン・ブラッド・デイズ』以来となります。今回はどういった経緯で参加されたのですか?

『ガン・ブラッド・デイズ』(注.1)はコアなファンがけっこう付いてくれた作品で、ゲームコンセプトに対する社内的評価も悪くなかったようなんです。それが縁でまた声をかけていただき、企画自体は随分前からゆるゆると進めていました。当初の話としては、『ガン・ブラッド・デイズ』的なSFミリタリーのコンセプトを踏襲しつつ、新しいものを作りましょう、という感じだったと思います。ファーストオーダーとして、少年少女が戦う内容にしたい、という話もありましたし、初期の段階で基本的なコンセプトはほぼ出尽くしていたのではないかと。加えて、リアリティラインを高めてほしいとの要望があったのですが、私としては、高めちゃっていいの? という気持ちで。リアリティラインをあまり高めすぎると、シナリオがドロドロしたものになりがちなんです。ですので、少し加減しましょう、とこちらから提案したりもしました。

- その結果として、少子化で経済的に立ち行かなくなった日本を舞台に、それぞれ立場が異なる勢力が相争う設定が生まれたわけですね。

はい。でも基本的に、少子化になると戦争は起こりにくくなるんですよ。当たり前の話ですけど、土地がどんどん余ってくるので、喧嘩しなくてもいいじゃん、となる(笑)。戦争のほとんどは領土争いですから。

- そこを補強する設定が、人工人間の存在というわけですか?

そういうことです。人間が工場から次々と生まれてくるような状況になれば、少子化の解消はもちろん、戦力の不均衡も発生しますから。本作の日本がそうなってしまったのは、人工人間の全面解禁で日本を再興しようとするカスミガセキなる勢力が、官製クーデターを起こしたのがきっかけです。これに対抗して反政府勢力のヤオヨロズが現れ、この両陣営が基本的な対立軸となります。加えて、北海道に配備されていた対ロシア用の兵器が本土に移送された結果、戦力の空白地帯が生まれ、そこを根城として第三戦力のダクシスが台頭してくる。ダクシスは構成員のほとんどが人工人間で、人工人間による人工人間の国家を作ろうとしているんです。

- 3勢力による戦争を描く上で、人工人間のアイデアがかなり効いていますね。

とはいえ、「人口人間」対「普通の人間」という単純な構図には落とし込みたくなかったので、なるべく複雑な様相になるようにはしました。対立する3つの勢力は、どこも人工人間を否定できないどころか、主戦力として扱っています。人工人間に批判的な反政府勢力であろうが、戦力として有用であれば使わざるをえない。その時点で、彼らの大義はだいぶ揺らいでいる状態なんです。

― ゲームのシナリオに携われるときは、いつもこれぐらい設定を作り込むんですか?

ものにもよりますね。でも、「神は細部に宿る」とも言うように、みんなが見ていないような部分までしっかり作っておくと、クオリティがちゃんと上がるんです。プレイヤーにとっても、ここはこうだったんだ! という気づきや驚きが多ければ多いほど、そのゲームは特別なものになりますし。私が担当したものについては、結果的に気づかれなくてもいいので、きちんと細部までこだわったものにしたいと思っています。それに設定を作り込んでおかないと、あとで大変な目に遭ったりするんですよ。とくに今回のようなゲームは、リリース後の拡張も視野に入れておく必要があるので、設定がアバウトだと破綻を招くことになりかねませんので(笑)。

- 最後に、ファンの方に向けてメッセージをお願いします。

この作品には、私ひとりでは作ることができない面白さがあります。ケイブだからできる、そして井上さんがいるからできる、そのセッションの面白さを従来からの私のファンには楽しんでほしいですね。逆にケイブファン、井上さんのファンにも、私がいることでちょっと違うところを楽しんでもらえると嬉しいです。

※ゲーム画面は開発中のものです。

注1.ガンブラッドデイズ…2012年8月サービス開始したケイブ運営のオンラインゲーム。シナリオを芝村裕吏氏が担当した。(現在はサービス終了)

注2.高機動幻想ガンパレード・マーチ…2000年9月に発売されたPS用シミュレーションゲーム。自由度の高さが特徴で、口コミでブレイク。コミカライズ、アニメ化など人気を博した。